泌尿器科専門医 小堀善友×NOZZE.代表 須野田珠美
対談 結婚の◯◯学「第4回目 : 男性不妊学」
(結婚アテンダント公式テキスト第12章 「妊娠と出産」について)

不妊は二人で取り組むもの

[泌尿器科専門]小堀善友×結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美対談の様子01

獨協医科大学越谷病院で「男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症」がご専門の泌尿器科専門医 小堀善友(こぼりよしとも)先生。
専門分野を突き詰めた結果(?)男子4人のお子様をお持ちの小堀善友先生に、NOZZE.代表取締役 須野田珠美が「結婚の男性不妊学」について伺いました。

男性不妊の原因とは?

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:本日は、泌尿器科医で、男性不妊症を専門分野とされる、小堀善友先生にお越しいただきまして、「結婚の男性不妊学」というテーマで、これから社会の中で男性の不妊がどのように増えていくのか、今後どのように対応すると良いかなどを伺いたいと思います。
少し前までは、赤ちゃんができないのは女性の不妊が原因と言われていましたが、今は逆に、男性の不妊のほうが多いのではないかと思うくらい相談が増えています。小堀先生、まずは、男性不妊の原因を教えていただけますか?

小堀善友

小堀:はい、ここ40年で50%の精子が減ったというデータがありまして、一番の原因は、生活習慣の変化だと考えます。
例えば、200年前の人は、暗くなると夜8時には寝ていましたが、今は、夜12時を過ぎてもお酒が飲める環境です。忙しく仕事をしているということもありますが、どんどん生活が変化しています。いわゆる「ミスマッチ病」というものがあり、イスに座る時間が長ければ長いほど、腰痛症が増える、心臓の血管がつまるなどの症状が出るのです。なぜかというと、昔はイスには王様しか座ることが出来ませんでしたが、産業革命後は皆が座れるようになり、座って勉強できるようになったので学校ができて、また、座って仕事ができる職業が増えてきました。
昔から300万年の間は、ホモサピエンスとして狩りをしていたのが、ここ一万年ほどで農耕を始めて、産業革命で大きく変化し、さらにスマホが開発されたのが最近のことです。目まぐるしく社会が変わる中、体がついていかない。そうすると、いろいろな病気が起きます。がんもそうですし、糖尿病、肥満もそうですね。酸化ストレスという老化ストレスがかかり、一番最初に何が影響を受けるかというと、「不妊症」なのです。すべては、生活習慣の変化ということが考えられます。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:先日、テレビ番組で、座っている時間が長い人のほうが早死にするという特集があり、驚いてすぐに立ち上がりました(笑)
なるべく下半身を動かす適度な運動が必要ということでしょうか?

小堀善友

小堀:そうですね。医者としてデータ上の話をしますと、やはり、一時間座っている内の、何分かは立つということをしないと、病気などのリスクが高くなるという結果が出ています。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:その番組では、一時間ごとに5分立って軽い運動をする習慣を持つのが良くて、座りっぱなしが一番良くないとのことでした。女性は子宮を圧迫されますね。それによる不妊症も多いと聞きます。血流が著しく悪くなり、心臓にも良くないと放送されていました。医学の進歩と同時に、昔は良いとされていたことが、逆に悪いとか、食べ物でも同様にありますね。
やはり最新の医学に、よく耳を傾けて、今出来ることから改善していくべきだと思います。先生、男性の不妊に良い食べ物はありますか?

小堀善友

小堀:いくつかありますね。
データとして出ているのは、例えば、ナッツを食べる人、魚の消費量が多い人が精液検査の結果が良好であるということ。それはよくよく考えると、ナッツや魚を多く食べている人が健康であるということは昔から知られていることです。ですので、俗にいう健康的な食生活を送り、例えばりんごだけを食べるという極端なことをしなければ良いのです。それが、妊娠するための力、妊孕性(にんようせい)につながります。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:例えば、滋養強壮に良いと言われるような、牡蠣や鰻はいかがですか?

小堀善友

小堀:毎日食べるわけではないと思いますので、ほどほどであれば悪くはないでしょう。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:ですが、朝に納豆を食べてお味噌汁を飲むという、昔からの食生活は、今の独身男性には難しいですね。朝から、立ち食いソバやハンバーガーを食べたり、むしろ朝食抜きの方が多く、昼はコンビニ弁当など、添加物など有害と言われるものが入っているものを食べています。そして、夜は飲んで帰る…と、昔からの当たり前の食生活が行えないですね。
これとこれを食べると良いという、即効性があるものなど、皆さんが取り入れやすいものはございますか?

小堀善友

小堀:全ては習慣からくることなので、男性側の特効薬はないと思っています。
由々しき問題ですが、精子が減っているのは全人類の流れですから、全人類が赤ちゃんを作り辛くなっているのは、今後さらに進んでいく可能性はありますね。現段階では、生殖補助医療という、人工・体外受精などの赤ちゃんを作る技術を使うことが出来ます。
それには、適切な時期に、適切な治療を行うことが大事です。必要な方は、専門の医師に訊いていただくのが、一番良い方法かと思います。

男性不妊治療はいくらかかる?

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:不妊治療には費用が掛かると言われますね。
人工授精が、一回1万円から3万円、体外受精は30万円など、病院によっても異なるかと思いますが。それを何回か行い、家やマンションを買うお金を全部不妊治療に注いで、それでも子どもができない夫婦がアラフォー世代で多いようです。
現実的には、皆さん検査に行ってみましょうと言っても、まだパートナーがいない方は産婦人科に行きにくいので、泌尿器科に行くことになるでしょうか。そちらでは、おいくら掛かりますか?

小堀善友

小堀:まずは、精液の検査を受けていただきます。
一般的な保険診療でしたら、精液の検査は1,000円から2,000円です。泌尿器科の受診でしたら、1,000円ほどかと思います。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:まず診察を受けて、その後はどうするのでしょうか?

小堀善友

小堀:開業医のクリニックでしたら、問診票に「不妊検査」と書いてください。採取した精液は、検査のセンターに送って調べます。少しタイムラグがあり、運動率が下がる場合がありますが。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:では、大学病院に最初から行ったほうが設備的にも良いですか?

小堀善友

小堀:大学病院に最初から行くのはお勧めしません。なぜかと言うと、大変混んでいるからです。私は、がんの治療なども担当していますが、大学病院へは検査をされてから、この治療を受けたいという時にお越しください。
一般的には、泌尿器科がある病院に、「精液検査が出来ますか?」と問い合わせて、まずは行っていただきたいですね。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:どのように検査をするのですか?

小堀善友

小堀:まず、容器を渡されて、自宅で精液を取ってきていただく方法があります。不妊科クリニックなどに行くと、採精室(精液を採取する部屋)があり、その部屋で取っていただくこともできます。今は、男性不妊も診る婦人科クリニックもかなり増えていますので、そのような病院ですと、初診で採精室で採取し、専門の培養士が診る場合もあるでしょう。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:結婚する前に恋人と一緒に病院に行き、両方に不妊の原因があるのかを調べるための検査(採精室で精液を採取し病院へ渡す)で、男のプライドが傷つけられたという方が結構いらっしゃるようです。それについては、いかがですか?

小堀善友

小堀:現在、婦人科では8割の方が検査を受けられる現状を考えると、私自身も男の身としては、行きづらいと思います。
だからこそ今、精子検査キットが1,300円ほどでネット販売等で購入できますので、そちらをまず使ってみることが良いでしょう。現に、その結果で精子が少ないのでと、診察を受けに来られる方もいます。まずは、自分で調べてみることをお勧めします。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:例えば、40歳を過ぎた男性が、男性はいくつになっても妊娠させることが出来る、とおっしゃることがあります。過去に付き合った女性が妊娠したことがあるので、と。それは関係ないでしょうか?

小堀善友

小堀:関係ないと思います。今問題になっているのは、子どもなしカップルもそうですが、二人目不妊ということ。なぜ、一人目できたのに、二人目ができないかというと、単純に年を取ったからです。
一人目は30代前半でできたが30代後半で二人目を作ろうとなると、その数年間は大きなブランクで、その数年間の間に赤ちゃんができづらくなる原因というのが結構あります。昔大丈夫だったから次も大丈夫…というのは、必ずしも理由にならない場合があります。そのようなケースが結構多いですね。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:精子を採取した結果が、その都度10倍くらい変わることがあるということでしたね。そうすると、精子検査をして一年くらい前には問題なくても、いま子作りをしたいと思った場合、また検査をしたほうが良いということでしょうか?

小堀善友

小堀:必ずではありませんが、まずは一年間ないし半年、性交渉を持っていただいて、そこでなかなかできなければ、遠慮せず受診してください。

精子バンクという選択肢は?

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:具体的な話になりますが、精子バンクを利用して、男性が若い時に精子を採取して冷凍しておくことについてはどう思われますか?

小堀善友

小堀:私自身は、がん患者の精子の凍結保存をやっておりまして、最近は若い方がガンになるケースが多いですね。先日も、水泳選手が白血病を公表されました。女性は、卵子、卵巣を凍結することによって、妊娠する力を残すことができます。実は一番興味があったことは、その選手がどうされたのかでした。抗がん剤を使う前に、凍結保存することで、将来、赤ちゃんを作る力を残しておくことができるのです。今、がんは治る時代になっていて、白血病も治る病気になっているので、その後の人生をいかにハッピーにするのかを考えると、赤ちゃんを産むという選択肢を残しておくことが必要かと思います。がんの治療は、赤ちゃんができなくなることが多いですので、そのためでしたら、精子や卵子を凍結することには大賛成です。
理由がないのに、若いうちから将来のために精子を凍結するということに関しては、納得がいかないですね。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:私どもの会員様の中には、男性が50代近くになり、女性もまもなく40歳というカップルがおり、そうすると本当に切羽詰まっています。
そのような方たちに、私たちが結婚アテンダントとしてアドバイスする際、訊かれてお勧めできる治療などの限界はどこまでなのかと悩むことがあります。

小堀善友

小堀:そうですか。私自身がそのような視点が抜けていたかと思い、社長の言葉が大変勉強になります。
二人の結婚を幸せにすることが大前提で、子どもを持つか持たないかという選択肢を考える機会を与えてもらえるのは、非常に重要なことだと思います。もし必要になった時点で、適切な治療が受けられて、専門の医師に受診できるような、体制を整えていくことが我々の役目かと思います。

[泌尿器科専門]小堀善友×結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美対談の様子02

セックスレス夫婦に大切なこと

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:結婚していても、セックスレス夫婦は多くなっていると言いますね。恋人同士でも、仲が良いのにセックスはあまりしないという人もいます。仮に、結婚の話が進んだ場合、セックスに代わるスキンシップなど、先生がお勧めの方法はありますか?

小堀善友

小堀:私は、二人が満足していれば、セックスは必要ないのではと思います。
私自身はセックスをしたい人間ですが(笑)ただ、日本人はセックスの回数が少ないということがありますが、逆に、性的負担感が少ないというデータが出ています。どういうことかと言うと、前立腺がんの時に神経を温存するかしないかということを訊くと、奥さんのほうが「切ってください」と言う方がいます。それは勃起できなくなるということです。しかし、海外では、前立腺がんになって勃起できなくなりセックスできなくなるということが心的負担となることが多いのです。日本人はそれが少ないのですが、良し悪しですね。
先ほどのように、スキンシップを取るだけでも満足できるということであれば、私はそれでも良いと思います。良くないのは、旦那様の温度と奥様の温度があまりにもかけ離れているパターンで、そのような夫婦がカウンセリングに訪れると、二人だけではなかなか話すことができません。ですから、第三者を間に挟んでお互い思っていることを全部吐き出させて、お互いのことを理解し合い、お互いの希望を添わせていくことができれば良いかと思います。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:第三者が間に入ることで効果があるということでしょうか?

小堀善友

小堀:そうですね。効果があるかと思います。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:今、アラフォーで結婚する方たちが増え、普通のセックスの回数であっても一年妊娠がないと「不妊」となり、その後、不妊治療を多くの方がしている現状があります。
結婚アテンダントの講座の中で出た話として、その方たちの良い治療法だと思ったのは、不妊カップルが三組いて、カップルを交換して話をさせるというものでした。
「俺たち、子どもがいなくても幸せだよね。」と言っている夫の奥さんが、夫がそう言うので合わせていただけで、やはり「チャンスがあれば、子どもが欲しい。」と言う場面がありました。夫婦だからこそ言えないことがありますが、相手が変わるとその人には言えるということでした。どうして言えるのかというと、同じ不妊治療をしている同士だから、痛みを分かってくれると思って話すことができた。そして、今度は、本当の夫婦に戻って話をすると、とても柔らかな気持ちになって、お互いが本音で話せるようになったそうです。このような機会も必要ではないでしょうか。
現実には、男性が結婚前に自分の精子を調べて、不妊かもしれない、不妊予備軍かもしれないと思ってもそのまま結婚しますよね。お相手に「私は不妊予備軍です。」と普通は言えないでしょう。そして、一年経っても子どもができない。奥さんも自分で調べていて、不妊予備軍かもしれないという結果を旦那さんに言えない、そのようなことも起きてくるのではないでしょうか。その場合は、どうすると良いのでしょうか?

不妊と分かった時こそコミュニケーションを

小堀善友

小堀:結局は、二人のコミュニケーションですね。
例えば、先ほどのがん治療を受けた方でしたら、自分には精子や卵子がいないことが分かっている状況で、パートナーとどのように接していくか、将来どのようなことを考えて結婚していくのかが、大事な問題となります。自分のことを知ることも良し悪しかもしれません。最初に調べておくブライダルチェックなどは、本当に良いことかどうかは悩みますね。その結果で結婚しないという選択も出て来るかもしれませんので。ですが、それは決して間違っていることではないですし、結局は二人のコミュニケーションであり、どれだけ理解し合っているかが重要ではないでしょうか。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:よく調べると不妊予備軍という場合でも、先ほど先生がおっしゃったリラックス状態を保てれば、ホルモンの調子が良く、仲が良くて、自然な性交渉をしている内に妊娠することもあり得ますか?

小堀善友

小堀:あとは、確率の問題となりますね。5.5組に一組は、何らかの原因で、不妊症という現状がありますので、その場合は、気軽に相談していただきたいです。
今、生まれてくる子どもの、18人に一人が体外受精で生まれてくるのです。となると、小学校の一クラスの内、二人もしくは三人が体外受精のお子さんであるという確率です。
高度な生殖治療は、当たり前の時代となってきていて、日本は多くの自治体から補助が出て、税金などでカバーする制度がありますので、必要な治療がありましたら使っていただきたいですね。
アメリカなどは補助がないので、数は多くないのです。

結婚相談所ノッツェ.代表須野田珠美

須野田:最後に、男性の皆さんに、先生から一言お願いします。

小堀善友

小堀:一番大事なことは、自分の体のこと、相手の体のことをよく知る、ということですね。もし、赤ちゃんが欲しいと思い、必要な時がありましたら、精子検査などを受けて、相談してください。

小堀 善友(こぼり よしとも) プロフィール

小堀善友(こぼりよしとも)

小堀 善友(こぼりよしとも)
泌尿器科医 埼玉県生まれ。
2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。
主な著書は『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。
ボールレンズ(小さな拡大レンズ)を用いた精液検査をテーマにした研究を「2016年日本泌尿器科学会総会」、「AUA2016(米国泌尿器科学会)」にて発表しそれぞれ総会賞を受賞。
専門分野を突き詰めた結果(?)、男子4人の親となる。